MRC Prodigy Express2 DCC システムについて

MRC Prodigy Express2 DCC(デジタルコマンドコントロール)システムは、鉄道模型の操作をより楽しく、簡単にするためのシステムです 。このシステムには、コマンドステーション(ベースユニット)、電源、LCDディスプレイ付きのハンドヘルドコントローラー(Cab)が含まれています 。最大9,999のアドレスと32台のCabを使用できるため、将来的にレイアウトを拡張したい場合にも対応できます 。


DCCの基本的な仕組み

DCCシステムは、コマンドステーションがDCCコマンドをレイアウトに送信し、車両(機関車など)に搭載されたDCCデコーダーがそのコマンドを受信するという仕組みです 。各デコーダーには固有のアドレスが割り当てられており、デコーダーは自身のアドレスと一致するコマンドのみに従います 。  

これにより、以下のようなメリットがあります。
・複数のブロック分けやパワーパックが不要になります 。
・同じ線路上で、異なる車両を異なる速度、異なる進行方向で同時に走らせることができます 。
・車両のヘッドライトをオン/オフしたり、サウンドデコーダー搭載車であればサウンドを鳴らしたりすることも可能です 。


レイアウトへの接続方法(クイックスタート)

Prodigy Express2をレイアウトに接続する手順は以下の通りです。

1.パワーサプライ(電源)をベースユニットに接続します 。

2.AC電源コード(110VAC、60Hz)をコンセントに差し込みます 。

3.小型のマイナスドライバーを使用して、メインの線路(Main Track)からの2本のワイヤー(22AWG以上の太さ)をベースユニットの「Main Track」とマークされた端子に接続し、プログラムトラック(Program Track)からの2本のワイヤーを「Program Track」とマークされた端子に接続します 。ワイヤーの被覆ではなく、ワイヤー自体が端子にしっかりと固定されていることを確認してください 。

4.ケーブルの一端をCab(コントローラー)に、もう一端をベースユニットのCabジャックに差し込みます 。将来的なアップグレードやパワーブースト用の「Booster」とラベルされたジャックは使用しないでください 。複数のCabを使用する場合は、別途エクステンションボックスが必要です 。


車両の走行方法

車両を走行させるには、まずその車両のアドレスを知る必要があります 。多くのデコーダーは工場出荷時のデフォルトアドレスが「3」ですが、デコーダー搭載済みの車両の場合は、その車両の車番がアドレスになっていることがあります 。お使いのデコーダーまたは車両のマニュアルでアドレスを確認してください 。

車両を選択し、走行させる手順は以下の通りです。

1.LOCO キーを押します 。

2.数字キー(0-9)を使って車両のアドレスを入力し、ENTER を押します 。これでその車両を選択(acquire)したことになります 。一度選択した車両アドレスはCabに記憶されます 。

3.DIRECTION キーで車両の進行方向を設定します 。

4.THROTTLE つまみを回して車両の速度を調整します 。選択した車両が動き始めます 。

5.車両の速度を1段階ずつ増減させたい場合は、+1 または -1 キーを軽く押します 。-1 キーを長押しすると、車両が削除されてしまうので注意してください 。

6.ヘッドライト(F0)をオン/オフするには、0 キーを押します 。


補足:

・Cabのディスプレイに表示されている車両アドレスが点滅している場合、他のCabも同じ車両を操作していることを示しています 。これは単なる通知であり、あなたの操作には影響しませんが、2台のCabで同時に操作すると、車両の動きが予期せぬものになる場合があります 。円滑な操作のためには、どちらか一方のオペレーターがその車両の操作を終了(Cabから削除)する必要があります 。


アクセサリー機能の操作

車両のヘッドライト以外の機能(サウンドなど)を操作する方法です。

・機能F0〜F9を操作するには、数字キー 0〜9 を押します 。

・機能F10〜F13を操作するには、F10-F13 キーを押します 。

・機能F14〜F28を操作するには、まず shift キーを押し、その後2桁の数字を入力します 。

・機能F1〜F12がオンの場合、LCDに「F1」〜「F12」と表示されます 。F13〜F15は表示されません 。

CabのLCDディスプレイの左側には、現在操作している車両の情報が表示されます。例えば、車両アドレス「3802」、進行方向「REV」(逆方向)、速度「102」と表示され、アクセサリー機能「F1」と「F11」がオンになっていることが確認できます 。


車両の呼び出し(Recalling Locos)

Cabに記憶されている以前使用した車両を呼び出すことができます 。最大25台の車両を記憶できます 。

1.RECALL キーを押すと、記憶されている車両が順に表示されます 。

2.目的の車両が表示されたら、ENTER キーを押すとその車両が選択されます。

注意点:

・Cabをベースユニットから抜くと、最後に使用した5台の車両のみが記憶に残ります 。

・新しいCabを使い始める際は、よく使用する5台の車両を選択し、一度Cabをベースユニットから抜いてください 。これにより、その5台の車両アドレスがCabに記憶されます 。

車両の削除(Deleting Locos)

Cabは最大25台の車両を記憶できます 。新しい車両を選択した際にCabの記憶が一杯だと、現在操作している車両の情報が失われることがあります 。これを防ぐために、使用しない車両アドレスを削除することが推奨されます 。

・使用しない車両を呼び出し、DEL キーを2秒間長押しすることで削除できます 。
・ただし、最後の1台の車両アドレスは削除できません 。

緊急停止(Emergency Stopping)

現在操作している車両を緊急停止させるには、STOP キーを押します 。
・STOP キーを2秒間長押しすると、メインの線路への出力が停止します 。ベースユニットの2つのライトが点滅します 。
・メインの線路への出力を再開するには、再び STOP キーを2秒間長押しします 。

スピードステップ(Speed Steps)

スピードステップは、車両が停車状態から最高速度に達するまでの速度の段階のことです 。
Prodigy Express2は、14、28、128の3種類のスピードステップに対応しています 。スピードステップの設定値が大きいほど、より細かい速度調整が可能になります 。

・新しい車両アドレス(Cabに記憶されていないアドレス)を入力すると、Prodigy Express2はデフォルトで28スピードステップを設定します 。

・お使いの車両やデコーダーに合わせた適切なスピードステップを設定することで、車両をより適切に操作できます 。

・スピードステップを変更するには、SPD STEP キーを繰り返し押して希望の設定を表示させ、ENTER を押します 。この設定はその車両アドレスにのみ適用されます 。

注意点:

Cabの SPD STEP ボタンで設定を変更しても、デコーダー自体にプログラムされているスピードステップは変更されません 。これはCabの操作をデコーダーの設定に合わせるための機能です 。


CV(Configuration Variables)について

CV(Configuration Variables)、またはレジスタと呼ばれる設定項目は、デコーダーの様々な動作を設定するためのデータが格納されている場所です 。車両固有の特性に合わせてデコーダーの動きを細かく調整することができます 。

Prodigy Express2 DCCシステムでは、ほとんどの基本的な操作はCVを意識せずに行えます 。しかし、デコーダーをカスタマイズしたり、特殊な機能を使いたい場合にはCVをプログラムする機能も備わっています 。

よく使われるCV

以下の表は、ほとんどのデコーダーに含まれている代表的なCVです 。サウンドやライトなどの特殊な機能を持つデコーダーには、追加のCVがあります 。特定のデコーダーに含まれるCVとその設定値については、デコーダーの取扱説明書を参照してください 。
CV # Register # 機能
1 1 ショートアドレス
2 2 スタート電圧
3 3 加速レート (慣性)
4 4 減速レート (慣性)
5   トップ電圧
6   ミッド電圧
7   メーカーバージョン番号
8   メーカーID番号(リセットに使用)
17   拡張アドレス - 上位バイト
18   拡張アドレス - 下位バイト
19   アドバンストコンシスト
29 5 コンフィグレーションデータ


CV #29について

CV29はデコーダーの最も重要なCVです 。誤った設定をするとデコーダーが正常に動作しなくなる可能性があります 。Prodigy Express2は、車両アドレスをプログラムする際に自動的にCV29も設定するため、通常は自分でCV29をプログラムする必要はありません 。

ただし、一部のQSI®サウンドデコーダーなど、手動での設定が必要な場合があります 。その場合、ショートアドレス(1-127)の場合はCV29に「2」、ロングアドレス(128-9999)の場合はCV29に「34」を設定する必要があります 。

車両の進行方向の極性を反転させたり、14スピードステップに設定したい場合は、車両アドレスのプログラム後にCV29を再プログラムする必要があります 。以下の表を参考にCV29を再プログラムしてください 。CV29の値は車両アドレスによって異なります 。CV29の詳細については、MRCのウェブサイトのリソースセクションを参照してください 。

 
変更内容 デコーダーアドレス 1-127 デコーダーアドレス 128-9999
Prodigy Advanceのデフォルト設定 CV29=2 CV29=34
極性のみ変更 CV29=3 CV29=35
14スピードステップのみ変更 CV29=0 CV29=32
極性 & 14スピードステップ変更 CV29=1 CV29=33


プログラミング(デコーダー設定)

Prodigy Express2は、ほとんどのNMRA互換デコーダーを簡単にプログラムできます 。プログラミングはステップごとにガイダンスが表示されるため、初心者でも取り組みやすくなっています 。16進数や専門知識は不要です 。

Prodigy Express2では、独立したプログラムトラックまたはメインの線路上でデコーダーをプログラムできます 。メインの線路上でプログラムする場合でも、他の車両の走行に影響はありません 。

プログラミングを開始する前に、以下の用語に慣れておくと役立ちます 。

・Loco Address (Adr): デコーダーを識別するために割り当てられる番号(アドレス)です 。

・Start Voltage (SV): 車両が動き始めるのに必要な電圧です 。この値を設定することで、スロットルを少し回しただけですぐに車両が動き始めるようにできます 。

・Top Voltage (TV): フルスロットル時の最高速度に対応する電圧です 。Prodigy Express2は最大出力に設定されています 。入換機関車など、最高速度を抑えたい場合は、この値を調整してよりリアルな動きにできます 。

・Acceleration Rate (Acc): 車両が加速する際の慣性をシミュレートする設定です 。速度設定を上げても、車両が徐々に加速するようになります 。

・Deceleration Rate (dEc): 車両が減速する際の慣性をシミュレートする設定です 。速度設定を下げても、車両が徐々に減速するようになります 。


プログラムトラックでの車両のプログラミング

プログラムトラックは、個別の車両のデコーダー設定を変更するための専用の線路です。他の車両の走行に影響を与えずにプログラミングできます。

1.お使いのCabがプログラムトラックでのプログラミングを許可されていることを確認します 。

2.車両をプログラムトラックに置きます 。PROG キーを押してディスプレイに「Prog Prog Track」と表示させ、ENTER を押します 。

3.まず、ディスプレイに「Adr」が点滅し、車両アドレスのプログラムを求められます 。数字キー(0-9)で車両アドレスを入力し、ENTER を押します 。アドレス設定のみを行いたい場合は、ここで ENTER を押してスキップすることもできます 。

4.次に、「SV」が点滅し、スタート電圧の設定を求められます 。値を入力し、ENTER を押します 。

5.次に、「Acc」が点滅し、加速レートの設定を求められます 。値を入力し、ENTER を押します 。

6.次に、「dEc」が点滅し、減速レートの設定を求められます 。値を入力し、ENTER を押します 。

7.次に、「TV」が点滅し、トップ電圧の設定を求められます 。値を入力し、ENTER を押します 。

8.最後に、「CV#」が点滅し、その他のCVのプログラムを求められます 。ここまでの手順で基本的な設定は完了しています 。その他のCVをプログラムしない場合は、ENTER を押して終了します 。

9.CVをプログラムしたい場合は、CV番号を入力し、ENTER を押します 。次にCVのデータを入力し、ENTER を押します 。再び「CV#」が点滅し、他のCVをプログラムするか尋ねられます 。スキップする場合は ENTER を押します 。

注意点:
・誤ったデータをCVにプログラムすると、デコーダーが正常に動作しなくなる可能性があります 。CVをプログラムする際は、デコーダーのマニュアルをよく読んでください 。次ページの「Configuration Variables - CVs」のセクションも参照してください 。


メインの線路での車両のプログラミング

メインの線路上でプログラムすることで、車両をプログラムトラックに移動させる手間を省くことができます 。ただし、この機能を使うにはプログラムしたい車両のアドレスを知っている必要があります 。アドレスが不明な場合は、プログラムトラックでプログラムする必要があります 。また、全てのデコーダーがメインの線路でのプログラミングに対応しているわけではありません 。お使いのデコーダーのマニュアルでこの機能がサポートされているか確認してください 。

1.お使いのCabがメインの線路でのプログラミングを許可されていることを確認します 。

2.PROG キーを押してディスプレイに「Prog Main Track」と表示させ、ENTER を押します 。現在選択されている車両アドレスが点滅し、その車両をプログラムするか尋ねられます 。

3.現在選択されている車両をプログラムする場合は ENTER を押します 。別の車両をプログラムする場合は、そのアドレスを入力し ENTER を押します 。

4.それ以降のプログラミング手順は、プログラムトラックでのプログラミングと同じです 。

5.プログラミング中に車両が動いている場合、線路からの集電が不安定だとプログラムコマンドが正しく伝わらず、誤動作の原因となる可能性があります 。プログラミングを行う際は、車両を停車させることを推奨します 。

6.CVのみをプログラムしたい場合は、CV ON MAIN を押すことでショートカットできます 。


プログラムトラックでのデコーダーの値の読み出し

Prodigy Express2 DCCシステムでは、プログラムトラックに置いたデコーダー搭載車両のCV値を読み出すことができます 。これは、デコーダーのアドレスや設定しているCV値が分からなくなった場合に役立ちます 。ただし、全てのデコーダーがこの読み出し機能に対応しているわけではありません 。また、対応しているデコーダーでも、正しく読み出せない場合があります 。このような場合でも、本体の故障ではありません 。CVの読み出しは100%正確ではないことがあります 。

1.車両をプログラムトラックに置きます 。

2.PROG キーを押してディスプレイに「rEAd Prog Track」と表示させ、ENTER を押します 。

3.まず、「Adr」が点滅し、車両アドレスの読み出しを求められます 。ENTER を押すと読み出しを開始します 。読み出しには数秒かかる場合があります 。デコーダーが読み出し機能に対応していない場合は、「Err」(エラーメッセージ)が表示されます 。読み出しをスキップする場合は SHIFT を押します 。

4.次に、「SV」が点滅し、スタート電圧の読み出しを求められます 。ENTER を押すと読み出し、SHIFT でスキップします 。

5.次に、「Acc」が点滅し、加速レートの読み出しを求められます 。ENTER で読み出し、SHIFT でスキップします 。

6.次に、「dEc」が点滅し、減速レートの読み出しを求められます 。ENTER で読み出し、SHIFT でスキップします 。

7.次に、「TV」が点滅し、トップ電圧の読み出しを求められます 。ENTER で読み出し、SHIFT でスキップします 。

8.最後に、「CV#」が点滅し、任意のCVの読み出しを求められます 。CV番号を入力し ENTER を押すと読み出しができます 。読み出し後、ENTER を押すと再び「CV#」が点滅し、他のCVを読み出すか尋ねられます 。読み出しプロセスを終了する場合は、ENTER を押します 。

この翻訳と説明が、MRC 1420 DCCコントローラーの操作、特にDCC初心者の方の理解に役立てば幸いです。

 

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